留置職員と刑事は対立関係にある(=健全)。
2023年9月26日に被留置人となった。留置とは、刑事事件で警察により逮捕された者が今後の処遇が確定するまで一時的に留め置かれる事であり、その対象者が被留置人。留置職員(留置人)は警察組織の人間である。
(因みに、留置人=留め置かれる人という間違いが多いし、留置された人々の中でもその間違いが横行している)
留置された当日は、「警察という敵に囲まれながら生活せねばならない」と勘違いしていた。1週間ほど経って、同組織ながら留置職員は捜査側と全く相容れない存在だと知った。
改めて結論を言うと、留置は刑事と別々の組織内組織である。
これはにわかに信じ難かった。だって、同じ警察職員なのだから。ある日、ある出来事が起きてからそれを信じるようになった。僕が留置されていた新宿署での取調室での出来事。
僕のちょっとしたサービス精神で刑事のために少々黙秘を破り事件の一部を語った事があった。気を良くした刑事は久々に取れる調書を一生懸命書き始めた。僕が発言した言葉に色とりどりの装飾や彼らにとって都合の良い言葉を散りばめながら夢中で調書を取る姿をみてかわいいやつだなぁと思わず思ってしまった(供述調書についてはいつか後述する)。念の為に言うと、刑事の方々にもお世話になったという気持ちがある(多少、彼らの名誉にも気を遣っておこうと思う)。
やっと得られる聴取に没頭するあまり時間の経過を忘れた刑事二人はこのあと、大目玉を食うことになる。新宿署の留置職員の方が烈火の如く怒って取調室の前まで来たのである。
「◯◯県警さんのやり方だと、時間延長も申請せず捜査をするのですか?!」
刑事の二人は顔面蒼白で平謝りした。そして口を尖らせて、まだ10分くらいあるから申請する必要はないはずなのに・・・と漏らした。僕にはどちらが正しいことを言っているかわからなかったが、あそこまで大人気なく起こる留置職員はどういう立場でどういうつもりなのかと言いながら同情の言葉をかけた。
が、結果をいうと、この刑事二人に不備があった事がわかる。留置のルールからすると刑事はなすべき手続きを怠って取り調べをしていたようである。そして、この留置職員の方こそ、私が人生の上でもとても感謝を伝えたい人格者であった。そして、留置は規律通りにきちんと独立していることが確認できた。正直、驚くべきことであった。
留置職員は規律通りに仕事を全うし、実直である。刑事に対してもその職責のためにクレームをつけることもあるようだ。僕は、留置職というあまり世間に知られていない仕事を7ヶ月近く目の当たりにし、単純にとても立派な方々だと賞賛している。このことは、皆さんにも是非知って頂きたい。
因みに、対して刑事諸君らが不真面目だと言っているわけではない(否定も肯定もしない、今は)。
たくさんの刑事ドラマがあるが留置ドラマはない。地味だろうし、作品としては難しいだろう・・・。しかし、刑事事件の解決において日陰に位置する留置職のプレゼンスは思っていたより大きいのだと知った。
彼らが位なければ、刑事は犯人を逮捕することもできないし、検事も正義を実現できることはないだろう。
今後も留置生活を述懐して書き記していきたいと思う。
Comments